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計算が苦手なお子さんへの支援と自立支援

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発達障害と計算の苦手さ:原因と効果的な支援方法

計算力は日常生活や学習において重要なスキルですが、発達障害のあるお子さんの中には、計算に特に困難を感じる方がいます。この記事では、計算が苦手な理由や支援方法について詳しく解説していきます。

どのように計算ができるようになるのか

特に意識しなくても、計算する力は自然と身についていくように見えますが、実はそうではありません。計算能力は段階的に発達していきます。

計算能力の発達プロセス

生まれてから、計算ができるようになるまでの間に、どのように私たちは発達プロセスを習得していくのでしょうか。順番が前後しても、いい結果にはならず、次のプロセスを順番に身に着けていきます。

  1. 数の認知: 物の数を認識し、それを言葉や数字で表現する能力。
  2. 数のイメージ: 数を具体的なものと結びつけて理解する能力。例えば、「3」を「●●●」とイメージできる。
  3. 数字の操作: 数字を使って簡単な計算ができるようになる段階。
  4. 合成と分解: 数を分解したり組み合わせたりする能力。例えば、10を7と3に分解したり、逆に7と3を足して10にする。

これらの段階を順調に進むことで、より複雑な計算が可能になっていきます。

計算が苦手な理由をさぐる

では、なぜ計算につまづいてしまうのでしょうか。計算につまずく理由は様々ですが、先ほどの計算のプロセス十分に習得できていない可能性があります。それ以外にも、計算をするという作業にはいくつもの能力が関わっており、それらの苦手さが足をひっぱっていることもあります。

主なつまづき要因は次のとおり

a) 数の概念理解の困難:

数そのものの意味や大小関係が理解できていない場合があります。これは、計算のプロセスを十分に理解できていない場合が多いです。

b) 視空間認知の問題:

数字の位取りや筆算の際の位置関係の理解が難しいときは、学校の授業が筆算など桁数が増えていった場合の計算プロセスにつまづきがみられるパターンです。たくさん並んだ数字の中から必要な数字だけをピックアップしておくことが視覚的に難しいので、「どことどこを足すんだっけ?」と言ったようになりがちです。

c) ワーキングメモリの弱さ:

四則計算は桁数が増えると、計算の工程が増えていきます。その工程を覚えることができないので、答えにたどりつけないという場合。それから、 計算の途中経過を覚えておくことが難しいので、「どこまで計算したっけ?」「次にどうするんだっけ?」というようなことにもなりやすいです。

d) 注意力や集中力の問題:

長時間集中して計算に取り組むことが困難な場合や、計算が合わなくてすぐにあきらめてしまう場合もあります。数字を見るのが苦手なので、すぐに疲れてしまいます。目が痛くて集中できないよと訴えるお子さんもいます。

e) 抽象的思考の苦手さ:

入学時は数のイメージがしやすいように算数ボックスを使いながら、実際におはじきなどと結び付けて考えるので分かりやすいです。小学校3年生あたりから、□を使って、方程式の概念を学ぶような単元も出てきます。実際にないものを□に置き換えて考えるというような抽象的に捉える練習をしていくのですが、イメージがしにくい分難しいと感じる小学生も多いです。

このように、計算の発達プロセスは身につけたものの、更に続く複雑な工程についていけなってしまうのです。

指を使った計算から抜けられない理由

成長しても、ずっと指を折って計算しているお子さんはいませんか。なぜでしょうか。よくある理由について考えます。

a) 視覚的・触覚的サポートの必要性:

実際に見たことのない数をイメージすることが難しいので、指で置き換えて計算するとスムーズに計算や数のイメージができます。1万、2万という数字のイメージが浮かばず、問題を解く手が止まってしまっているところに、指を1万に置き換えるとスムーズに計算が進む場合があります。

b) ワーキングメモリの補助:

途中の計算で指を使うことで、計算結果を記録しておくことができますから、前の計算と同時に次の計算を覚えておく必要がなくなり、次の計算過程へスムーズに進むことができます。

c) 安心感:

慣れた方法で計算することで、不安を軽減できる。指があれば計算ができるからこれでいい!と、ずっと続けてしまいます。

d) 抽象化の困難:

文章題の意味が分からないよというお子さんのために、文章題で出てきた鉛筆を指に例えてあげて、一緒に考えると、問題がスムーズに解ける場合があります。問題をイメージしやすくするために指で例えて考えるというお子さんは、具体的なものに置き換えてあげると理解がスムーズになります。

このように指を使って計算をしているということは、足りていない部分をカバーしながら計算をしているということが分かります。

ディスカリキュリア(計算障害)とは

計算が苦手な主な理由の一つに、「ディスカリキュリア」と呼ばれる学習障害があります。ディスカリキュリアは、数学的な概念の理解や計算能力に特異的な困難を示す状態を指します。

ディスカリキュリアに言われている一般的な特徴は、

  • 数の概念理解が難しい
  • 数字の読み書きに困難がある
  • 簡単な計算でも時間がかかる
  • 数学的な記号や概念の理解が困難

ただし、計算が苦手な理由はディスカリキュリアだけではありません。ADHD(注意欠如・多動性障害)による集中力の問題や、ASD(自閉スペクトラム症)による抽象的思考の難しさなども影響する可能性があります。

いづれにしても、計算に困難があるということは、日常生活に不便と感じる点がいくつか出てきます。

計算の困難が大人になったときに及ぼす影響と対策

では、計算が苦手なまま成長して、大人になったときどのような不便さがあるのでしょうか。自立した生活を送るために必要されるには、日常生活での金銭管理、時間管理が主にあげられます。数字を使ったスキルをここにあげます。

  • 買い物時の支払いや釣銭の計算
  • 生活費の管理や予算立て
  • スケジュール管理、交通機関の利用
  • クレジットカードの利用と返済計画
  • 料理などの計量

これらは、生活にはとても大切なものですが、今は電子決済もでき、金銭管理や時間管理ができるアプリもあり、上手に使うことができれば、数字の苦手さを補うことのできる便利な世の中になっています。とすれば、本当に必要なスキルというのは、便利なサポートグッズを使いこなせるための最低限の計算スキルがあれば、充分に自立した生活が可能です。

一方、ここまでのスキルを身に着けるのが困難なひとのために、権利擁護という制度があります。いくつかある事業のなかで、日常生活自立支援事業というものがあり、お金の管理を手伝ってもらい、収入の範囲で無理なく生活ができるようにサポートしてくれる制度です。

効果的な対応と支援方法

このように、大人になってからの支援制度はありますから、安心して今のお子さんにとって必要なサポートを続けていけば、自立への道は自然と見えてきます。

お子さんのつまづきが少しでも解消されるように、計算が苦手なお子さんのサポートとして、いくつか挙げました。

a) 具体物の活用: おはじきやくっつく積み木などを使って、5のかたまり、10のかたまりを意識し、イメージさせることを繰り返し、数の概念を視覚的・触覚的に理解させてみてください。

b) スモールステップでの指導: 簡単な計算から徐々に難しい計算へと段階的に進めましょう。少し前の学年の計算にさかのぼって、計算の復習から入るとよいです。

c) 視覚的教材の活用: 数字だけがずらっと並んだプリントはできないお子さんがいます。数をイラストに置き換えたり、数直線や百マス計算など、視覚的に分かりやすい教材を使用する。

d) ICTの活用: タブレットやPCを使った学習ソフトを活用し、楽しみながら学べるようにする。

e) 反復練習: 基本的な計算を繰り返し練習し、自動化を目指す。

f) 生活場面での活用: 買い物や料理など、日常生活の中で計算を使う機会を使うのもよいです。お財布を持たせて、お財布の中のお金を数える習慣をつけてると効果的。さらに、100円ショップなどで、自分のお財布でお買い物をさせる経験もおすすめです。

まとめ:個々の特性に合わせた支援の重要性

計算が苦手なお子さんへの理解と支援は、個々の特性を考慮しながら行うことが重要です。計算能力の発達プロセスは段階的であり、各段階でつまずきが生じる可能性があります。主な困難の要因として、数の概念理解、視空間認知、ワーキングメモリ、注意力・集中力、抽象的思考の問題が挙げられます。

指を使った計算への依存は、これらの困難をカバーする手段として継続されることがあります。ディスカリキュリアという特定の計算障害もありますが、ADHDやASDなど他の発達障害も計算の苦手さに影響する可能性があります。

大人になってからも、金銭管理や時間管理など日常生活で計算スキルが必要となる場面は多くありますが、テクノロジーの活用や権利擁護制度などのサポートを利用することで、自立した生活を送ることは可能です。

効果的な支援方法として、具体物の活用、スモールステップでの指導、視覚的教材の使用、ICTの活用、反復練習、日常生活での実践などが挙げられます。これらの方法を組み合わせ、お子さんの特性に合わせた支援を行うことで、計算スキルの向上と自立への道筋をつけることができます。

最終的には、お子さんの個性や強みを活かしながら、社会生活に必要な最低限の計算スキルを身につけ、必要に応じて適切なサポートを受けられるようにすることが重要です。

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