発達障害の子どもたちはどのような薬を飲んでいるのか、発達障害をお持ちのご家庭に聞いてみたいけれど中々聞けないもの。そこで、発達障害のご家庭は知っておくと便利な薬の知識をご紹介しています。
筆者は医師ではありませんので、気になった情報は、かかりつけのお医者様に詳しく相談してみてください。あやふやな知識でお医者さんに質問しても、何を答えたらいいのか、お医者さんも困ってしまいます。教えてほしい情報をお医者さんから引き出すことも難しくなります。ですから、相談しやすくなるため、一般人が予備知識として身に着けておくと便利な知識として、ご一読ください。
発達障害の子どもに薬が処方されるタイミング
発達障害のある子どもに薬が処方されるタイミングは、個々の状況によって異なります。一般的に、以下のような場合に薬物療法が検討されます:
- 問題行動が顕著で、日常生活や学習に支障をきたしている場合
- 非薬物療法(行動療法、心理療法など)だけでは十分な効果が得られない場合
- ASDやADHDの症状が強く、社会生活に適応することが困難な場合
- 睡眠障害が深刻で、生活リズムが乱れている場合
子どもの年齢、症状の程度、生活環境などを総合的に判断し、薬での治療の必要性を見極めます。
幼稚園で問題行動がある、小学校で勉強についていけない、中学生で高校受験を控えているなど、ライフステージで出てくる困りごとに合わせて、お医者さんがお子さんに合ったものを処方してくれます。
ですから、困りごとがある場合は、お医者さんに相談できるようにノートや相談資料としてまとめておくとよいです。
発達障害に処方される主な薬剤とその効果
発達障害の子どもに処方される主な薬剤には、以下のようなものがあります。一般の薬局では取り扱っていません。これらの薬剤を入手するには、専門医による適切な診断と処方が必要です。
ADHD治療薬:注意力向上と多動性抑制
- ストラテラ(一般名:アトモキセチン)
- 特徴:刺激薬ではないADHD治療薬
- 効果:注意力の向上、衝動性や多動性の抑制
- 利点:依存性が低く、1日1回の服用で効果が持続
- コンサータ(一般名:メチルフェニデート)
- 特徴:中枢神経刺激薬
- 効果:集中力の向上、落ち着きの改善
- 利点:徐放性製剤のため、1日1回の服用で学校での時間をカバー
- ビバンセ(一般名:リスデキサンフェタミンメシル酸塩)
- 特徴:中枢神経刺激薬(プロドラッグ)
- 効果:持続的な注意力の向上、多動性・衝動性の改善
- 利点:1日1回の服用で長時間効果が持続し、濫用のリスクが低い
- インチュニブ(一般名:グアンファシン塩酸塩)
- 特徴:非中枢神経刺激薬
- 効果:注意力の向上、衝動性や多動性の抑制
- 利点:血圧に影響を与える可能性が低く、睡眠の質を改善する場合もある
これらの薬は、子どもの脳内の神経伝達物質のバランスを整え、ADHD症状の改善に役立ちます。副作用としては、食欲低下や軽度の不眠などが報告されていますが、多くの場合、時間とともに軽減します。
ASD関連薬:こだわり行動の緩和と情緒安定
- エビリファイ(一般名:アリピプラゾール)
- 特徴:非定型抗精神病薬
- 効果:イライラや興奮の軽減、こだわり行動の緩和
- 利点:他の抗精神病薬に比べて、体重増加などの副作用が少ない
- リスパダール(一般名:リスペリドン)
- 特徴:非定型抗精神病薬
- 効果:攻撃性や自傷行為の軽減、情緒の安定化
- 利点:ASDに伴う問題行動の改善に効果的
これらの薬は、ASDの子どもたちの情緒面での安定や、周囲とのコミュニケーションを円滑にするのに役立ちます。
発達障害の薬の処方と使用における注意点
発達障害の治療薬を服用するにあたり重要なポイントがあります。
医師によって処方量が異なる場合も
長年の経験をもとに、お医者さんはその子の状態に合った処方量を決めますので、一般に適量を言われる量を上回ることもあれば、下回ることもあります。最初は少量にして、徐々に増やして様子を見てくれる先生方もいます。
ただ、先生の処方量の決め手となるのは、実際に見るお子さんの様子であったり、お母さん・お父さんから見たお子さんの様子です。服用によるお子さんの変化をしっかりと見届け、お医者さんに説明することが大切です!
これは、一緒にいる時間が多いご家庭でしかできないことです。また、学校での様子も先生から聞いてみることも重要です。学校での様子にどう変化があったかも、お医者さんとしては知りたいところですので、事情を話して担任の先生から日々の様子を教えてもらいましょう。
副作用がないかチェック
服用すぐには何らかの副作用が見られる場合も多いですが、1か月ぐらいすると副作用が落ち着くともいわれています。同じ薬でも人によって現れる副作用が異なります。ですから、どんな副作用が出ているのか、しっかりとお子さんの様子を観察してください。その副作用は、薬を服用し続けられられるものなのか、学校生活に支障がないものなのか、すぐに収まりそうか、しばらく様子を見ましょう。
そして、お医者さんにその様子を報告して、服用の相談をしてください。体に合わない場合は、薬の種類を変えることもできます。一つの薬が無理だったから、もう発達障害の薬は飲めないというわけではありません。複数の発達障害の薬を組み合わせて飲むこともあります。薬の効き目を最大限にするため、服用時間をずらすこともできます。
ですから、服用の様子に変わりはないか、お医者さんへ伝えてください。
定期的な診察と経過観察が必要
お子さんの様子を見て、成長とともに薬を変更することもあります。ですから、病院へは定期的に通いましょう。長くお付き合いするものと捉えて、障害年金の申請も念頭に入れておくと、将来も安心です。障害年金の申請は医師の処方も必要とするからです。
成長とともに体が大きくなると、薬の量を増やすこともでてきます。ですから、定期的に学校で行われる身体測定を利用して、お子さんの身長と体重は把握しておきましょう。
食欲低下が副作用で続くような薬もあります。その場合は、お子さんの身長と体重の変化を把握しておきましょう。やせすぎたら注意が必要です。成長に必要とされる栄養の管理が特に重要となりますから、日々の食生活を見直す場合も出てきます。
他の薬との併用に注意
発達障害の治療薬と他の薬(風邪薬など)を併用する際は、注意が必要です:
- 薬物相互作用のリスクがある
- 副作用が増強される可能性がある
- 治療効果に影響を与える可能性がある
他の薬を服用する際は、必ず担当医に相談し、安全性を確認することが大切です。特に以下の場合は要注意です:
- 市販の風邪薬や解熱鎮痛薬
- 抗ヒスタミン薬(アレルギー薬)
- 漢方薬やサプリメント
このあたりについては、かかりつけの薬局でも相談に乗ってくれます。薬剤師さんに薬の受取の際に聞いてみても良いと思います。必要があれば、かかりつけの薬剤師さんが処方してくれた先生に確認を取ってくれます。お医者さんに聞くより、聞きやすいと思いますので、気になることはどんどん聞いてみましょう。
漢方薬の可能性:発達障害症状の緩和に効果的?
子どもを薬を飲ませることに抵抗がある場合、漢方薬を検討する人もいます。漢方薬の特徴は以下の通りです:
- 副作用が比較的少ない
- 緩やかな作用で、長期服用が可能
- 個々の体質に合わせた処方が可能
発達障害に用いられる代表的な漢方薬には、抑肝散や黄連解毒湯などがあります。これらは、イライラや興奮を鎮める効果があるとされています。
ただし、漢方薬も医薬品であり、専門医の指導のもとで使用することが重要です。また、西洋医学的な治療と併用する場合は、必ず医師に相談してください。
薬物療法と生活習慣改善:総合的アプローチの重要性
薬を服用している家庭に話を聞くと、特に子どもに変化は見られないということも多いです。ですから、薬だけに頼るのではなく、困りごとに対しては、効果的に薬が効くように薬以外の調整をしてあげることも大切です。風邪薬も休息をとるからこそ、体の免疫力が上がり風邪が治っていくわけです。発達障害の薬も薬が効きやすくなるコンディションを整えてこそ、と考えてください。
- 薬は補助的な役割:薬だけで全ての問題が解決するわけではありません。
- 生活習慣の改善:規則正しい生活リズム、バランスの良い食事、適度な運動が大切です。
- 環境調整:家庭や学校での環境を、子どもの特性に合わせて整えることが重要です。
- 非薬物療法との併用:行動療法、作業療法、言語療法などと組み合わせることで、より効果的な支援が可能です。
- 家族の理解と協力:家族全体で子どもの特性を理解し、サポートすることが大切です。
以上のことが全てできれば、本当に子育ては苦労しません。発達障害のお子さんをお持ちのご家庭は、毎日が戦闘状態の大変なご家庭もあれば、運動会のような騒がしい家庭もあります。ですから、できることから一つずつ進めていき、お子さんの成長を見守っていければ良いのではないのでしょうか。
まとめ
薬の服用は発達障害のある子どもたちの生活の質を向上させる一つの選択肢です。ただし、薬に頼りすぎず、子どもの個性を尊重しながら、総合的なサポートを行うことが重要です。薬の選択や使用方法、気になる症状については、遠慮なく担当医に相談してください。子どもの成長と発達を支える最適な方法を、医療専門家と一緒に見つけていきましょう。