子どもが学校に行きたがらない…親ができること
新学期が始まる季節、お子さんの様子に変化はありませんか？「学校に行きたくない」という言葉を聞いたとき、多くの親は不安に駆られます。これは不登校の兆候なのか、一時的なものなのか、どう対応すべきなのか。早めの対応が、お子さんと親御さんの日々を大きく変える可能性があります。この記事では、「学校に行きたくない」と言い出したお子さんへの対応について、具体的な例を交えながら解説していきます。
なぜ学校に行きたくないのか？その裏にある原因
「学校に行きたくない」という言葉の裏には、様々な理由が隠れています。単純な怠惰ではなく、多くの場合、お子さんなりの悩みや困難が存在しています。
よくある理由の一つに、学習の困難さがあります。特に発達障害を持つお子さんの場合、学習障害（LD）や注意欠如・多動性障害（ADHD）などが原因で、授業についていけない、集中できないといった問題を抱えていることがあります。例えば、ADHDのお子さんは、マルチタスクや情報整理が苦手で、授業中に板書を写しながら先生の話を聞くことに困難を感じる可能性があります。
また、広汎性発達障害（ASD）のお子さんは、社会性やコミュニケーションの面で困難を抱えていることがあります。クラスメイトとの関係づくりに悩んだり、グループ活動に参加するのが苦手だったりすることで、学校に行くことへの不安が高まる可能性があります。
さらに、協調性運動障害（DCD）を持つお子さんは、体育の授業や部活動で困難を感じることがあります。運動が苦手なことで自信を失ったり、からかわれたりすることで、学校に行くことへの抵抗感が生まれることもあります。
これらの障害は、「発達の凸凹」と呼ばれることもあります。つまり、ある分野では優れた能力を持っていても、別の分野では困難を抱えているという状態です。例えば、聴覚優位のお子さんは耳で聞いた情報は理解しやすいけれど、視覚的な情報の処理が苦手だったりします。逆に、視覚優位のお子さんは図や絵を使った説明は理解しやすいけれど、口頭での説明だけでは内容を把握しにくいことがあります。
しかし、発達障害だけが原因ではありません。いじめ、友人関係の問題、家庭環境の変化、学業のプレッシャーなど、様々な要因が「学校に行きたくない」という気持ちを引き起こす可能性があります。
子どものSOSを見逃さない！小さなサインに気づく
お子さんが「学校に行きたくない」と直接言わなくても、その気持ちは様々な形で表れることがあります。以下のような小さなシグナルに注意を払うことが大切です。
まず、身体的な症状として現れることがあります。朝になると頭痛や腹痛を訴える、夜眠れない、食欲が減退するなどの症状が見られることがあります。これらは、学校に対するストレスや不安が身体症状として現れているサインかもしれません。
また、行動の変化にも注目しましょう。以前は楽しみにしていた学校行事や部活動に消極的になる、宿題をやろうとしない、学校の話題を避けるなどの変化が見られることがあります。特に、ワーキングメモリの問題を抱えるお子さんの場合、宿題の内容を覚えていられない、やり方を忘れてしまうといったことから、宿題に対して強い抵抗感を持つようになることがあります。
さらに、感情面での変化も重要なシグナルです。イライラしやすくなる、些細なことで泣き出す、無気力になるなどの変化が見られた場合、何らかの問題を抱えている可能性があります。特に、ASDのお子さんの場合、感情のコントロールが難しく、学校でのストレスが激しい感情の起伏として表れることがあります。
どう対応したらよいか？具体的な解決策
子どもの話を聞く
お子さんが学校に行きたくないと感じているとき、まず大切なのは、お子さんの気持ちを受け止め、寄り添うことです。「なぜ行きたくないの？」と問いかけ、じっくりと話を聞きましょう。ただし、ADHDや ASDのお子さんの場合、自分の気持ちを言葉で表現することが難しいこともあります。その場合は、「学校で嫌なことがあった？」「勉強が難しい？」など、具体的な質問を投げかけてみるのも良いでしょう。
専門家への相談
次に、お子さんの困難に対して具体的な支援を考えましょう。例えば、学習面で困難を感じているなら、家庭学習の方法を工夫したり、学習障害に対応した教材を使ったりすることで、少しずつ自信をつけていくことができます。視覚優位のお子さんなら、図や絵を使った説明を増やしたり、聴覚優位のお子さんなら、音声教材を活用したりするのも効果的です。
行動面やコミュニケーション面での困難がある場合は、ソーシャルスキルトレーニングやビジョントレーニングなどの専門的なアプローチも検討に値します。これらのトレーニングは、お子さんの苦手な部分を少しずつ改善し、学校生活をより快適なものにするのに役立つ可能性があります。
学校との連携
学校の先生との連携も重要です。お子さんの状況を先生に伝え、学校でどのようなサポートが可能か相談しましょう。例えば、座席の位置を変える、テストの時間を延長する、視覚的な補助教材を用意するなど、お子さんの特性に合わせた配慮を依頼することができます。特に、発達障害のあるお子さんの場合、個別の支援計画を立てることで、より適切なサポートを受けられる可能性があります。
自治体でしてもらえる支援
多くの自治体では、不登校や発達障害に関する様々な支援制度を設けています。これらの支援を積極的に活用することで、お子さんと家族の負担を軽減することができます。
- 教育委員会や学校が運営する教育支援センター（適応指導教室）
ここでは、不登校のお子さんが学習や活動を行える場所を提供しています。学校に行けなくても、同じような悩みを持つ仲間と交流しながら、少しずつ学校復帰に向けて準備することができます。
２．発達障害に関する専門的な相談や支援を行う発達障害者支援センター
多くの自治体に設置されています。ここでは、専門家による相談や診断、療育などのサービスを受けることができます。
３．スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーによる相談支援
これらの専門家は、お子さんの心理面のケアや、家庭と学校との連携を支援してくれます。
経済的な支援も重要です。特別支援教育就学奨励費制度や、障害児福祉手当など、お子さんの状況に応じて利用できる経済的支援制度があります。これらの制度を活用することで、必要な療育や教材にかかる費用の負担を軽減することができます。
自治体によって利用できるサービスや制度は異なりますので、お住まいの地域の窓口に相談してみることをおすすめします。早めに情報を集め、適切な支援を受けることが、お子さんの成長と家族の安心につながります。
親御さんへ
「学校に行きたくない」というお子さんの言葉は、重要なSOSサインです。この言葉の背景には、発達障害や学習の困難さ、人間関係の問題など、様々な要因が隠れている可能性があります。大切なのは、お子さんの気持ちに寄り添い、その原因を丁寧に探ることです。
小さな変化に気づき、早めに対応することが重要です。身体症状や行動の変化、感情面での変化などの小さなシグナルを見逃さないようにしましょう。そして、お子さんの特性に合わせた支援を考え、実践していくことが大切です。
学校の先生との連携や、自治体の支援制度の活用も有効な手段です。専門家のアドバイスを受けながら、お子さんに最適な環境づくりを進めていきましょう。
不登校や発達障害は決して珍しいものではありません。むしろ、多様性のある社会において、一人一人の特性を理解し、尊重することが求められています。お子さんの「学校に行きたくない」という言葉を、新たな可能性を探る機会と捉えてみてはいかがでしょうか。
最後に、親御さん自身のケアも忘れないでください。お子さんの問題に向き合うことは、時に大きなストレスを伴います。同じような経験をしている親の会に参加したり、カウンセリングを受けたりするなど、自分自身のサポートも大切にしましょう。
お子さんの成長には時間がかかります。焦らず、じっくりと寄り添いながら、お子さんと一緒に前を向いて歩んでいってください。必ず、お子さんらしい輝く未来が待っているはずです。
